面白いまちには面白い人が住んでいる。
豊橋市の面白い人、尖った人を紹介したい!この人突き抜けてると思える人と繋がりたい。
このコーナーはそんな思いから生まれました。
第1回は豊橋スロータウン映画祭の副会長であり、パーソナライズされた情報を個人のLINEに無料で発信している渡辺靖典さんをご紹介します。
渡辺靖典さんプロフィール
豊橋市内でトマト農家を営みつつ、豊橋の様々なイベントにかかわる。現在スロータウン映画祭副会長。個人的につながりのある人に豊橋エリアや相手が好きそうな情報を個別にセレクションしてLINEで発信することを毎日100人以上対しておこなっている。
今日、多分使える話ほぼないですよ
――渡辺さんを人に紹介するとき、なんてご紹介していいかいつも迷います。
渡辺:変な人って言っていいですよ、実際僕変なんで。いつもはトマト農家ですって答えるんですけど。それかスロータウン映画祭の人って言ってるかな。なんか偉くなって、いま副会長をしています。
スロータウン映画祭は2002年に始まって。あの頃、地方でまちなかを盛り上げるのに映画を使うのが流行ってたんですよ。最初単発のイベントとして始まったんですけど、そこそこ当たって、翌年から毎年開催になった。僕は映画が好きだったもので、いまアドバイザーになっている若杉彰さんという方がやっている、映画鑑賞サークルの、とよはしシネマトーク倶楽部というのに出入りしてたんです。その縁で最初から当日の受付とか設営とか、そういうのに関わってた。手伝ってよ、みたいな感じで。
運営のほうに関わりだしたのは2010年くらいだったかな。映画祭だけじゃないと思うけど、ずっと同じメンバーでやってるとなんというか、マンネリ化するでしょ。動員も落ちてきちゃって、こいつはまずいと思ったんだと思う、当時の上層部が。で、僕を含めて5人くらい、その時運営に入ったんです。だけどね、最初に言われたのは「好きにやっていい。でもお金はない」だったんです。
――いきなりめちゃくちゃシビアですね。
渡辺:スロータウン映画祭って本当に手弁当な会なんですよ。フィルム一本いくら、みたいな感じで市内の企業に買ってもらって。だからいつもお金の問題がある。
そうなるとお金がかからないイベントをやるか、みたいなことになって、それで自分で企画を考えて運営を始めたんです。今、僕はイベンターみたいになってるけど、出演交渉から会場選定から何から全部手弁当ですよ。
出演者はラジオで探すんです。僕、農家だからラジオつけて仕事してることが多いの。で、東京とか大阪とかのラジオを聴く。パーソナリティが地方に行ってもいいみたいなこと言ってると、この人呼べそうって思う。そのパーソナリティ個人のHPとかみて、連絡先が載ってたら直接コンタクトして……ってことをやってた。
杉作J太郎さんとか吉田豪さん、しまおまほさん、久保ミツロウさんと能町みね子さん。
豊橋に縁がありそうな人もチェックしてます。
豊橋出身の漫画家、河井克夫先生や蒲郡出身の漫画家、大橋裕之先生とかも。
皆さんの協力でイベントの収支としてはいい感じになったんだけど、やっぱり映画祭全体としてはまだまだかなあと思いますね。
▲写真はスロータウン映画祭HPより
――そう思われる理由は何ですか?
渡辺:スロータウン映画祭は運営側に男性が多い。でも、実際来ているのはほとんどが女性で、友達同士とかで来る。ということは女性が好きな映画かけなきゃならんでしょ。でも、映画選定してるのは男性、しかもおじさんばっかりだから。ちょっとでも女性の意見が入らないと、やっぱり偏るなって思う。実際、「82年生まれ、キム・ジヨン」とか上映した時は若い人ら、と言っても30〜40代女性が来てて盛況でした。
自分で好きな映画、思い入れのある映画を選ぶと、やっぱなんか違う感じになるんですよ。僕もそうなんだけど、自分の好きな映画が万人に、というかスロータウン映画祭のお客にウケない感じがする。……っていうかこれ、今日使える話ありますか? ほぼないですよ。やり直しますか。もう一回どっかで。
――そうですね、使えないところもかなり……(笑)。
渡辺:聞いてる人が喜ぶと思って過剰にサービスするんですよね。これ喋ったらまずいかな…と思うこと喋ったり、喋らせたり。
映画愛と、ロケの町豊橋との関係
――豊橋はフィルムコミッションも盛んで、豊橋を舞台に撮影された映画も多いですね。
渡辺:それは鈴木惠子さん(*1)がいたからですね。あの人はすごかった。僕本当にあの人には色々教わったと思います。
*1 豊橋のご当地メニュー「とよはしカレーうどん」の仕掛け人であるほか、映画やドラマロケの誘致活動をけん引してきた一般社団法人「とよはしフィルムコミッション」専務理事。ロケを通じたまちづくりを長年支えた。2023年、惜しまれつつ逝去。
――豊橋を舞台にした作品のなかで、人にお勧めしたいものを教えてください。
渡辺:人によるじゃない? でもそうですね。あえて言うなら「女極道…その名もスケ連! 恐るべき全日本」じゃないですか。豊橋と言ったらスケ連。VHSしかないかもだけど。
ゆるふわ系でお勧めするなら、「REX 恐竜物語」。子役時代の安達祐実さんが出ていたやつです。あれのんほいパーク(*2)で撮ってるんですよ。
最近だと「異動辞令は音楽隊!」もいいです。あれ、豊橋が舞台ではないんですけどロケハンをかなりきっちりやられていて、豊橋の中でもすごく都会っぽいところで都会のシーンを撮ってる。豊橋なのにって、実際に場所を知ってる人が見たらもっと楽しいんじゃないかな。
*2 豊橋市内にある「豊橋総合動植物園」の愛称。敷地内にある自然史博物館にはエドモントサウルス・アネクテンスのほぼ実物化石が展示されるほか、世界各地の化石や郷土の動植物の標本が並ぶ。
簡単な愛憎じゃない。ひねくれてるから、やってしまう
――渡辺さんは本当に情報の範囲が広いです。LINEでの情報発信も。
渡辺:ぜんぶ手作業です。いま大体130人くらいで、人によるけど1日2~5件くらい送るかな。ネットニュースとか、地元のローカル情報とか、そういうのを見て、この人こういうの好きそうかなって思った人にリンクを送る。個人的に。
▲実際に村井宛に配信されているLINE
――個人的に。手作業で、個人あてに?
渡辺:グループLINEとか好きじゃないから。130人くらいなら顔と名前くっついてるし、性格もなんとなく知ってるんで。この人こういう話すきそうだな、こういう活動してるからこの手のニュースを送ったほうがいいな、とか考えて相手ごとに送る内容を変えて。この人こういう話題地雷だな、みたいに思ったらそれは避ける。反応はないですよ。ほとんど、僕が一方的に送るだけ。たまーに、返信がありますけど。でもそこから会話になることもあんまりない。続けてるモチベーションって聞かれると困るけど、会ったときにやっぱ「読んでます」とか「楽しい」とか言われると嬉しいってのがあるのかな。
――そもそも、あの活動をはじめたきっかけは?
渡辺:mixiが衰退してきて、そのあとSNSは豊橋の人、Facebookに移行していった。でも、僕あれがダメなんですよ。身内感をすごい感じちゃって。だもんで、そこからTwitterのほうにいった。Twitterってポジティブな情報もネガティブな情報も、嘘も本当もあるでしょ。あれがいいなって思ってた。あと、2010年の半ばごろから、公式アカウントの中の人ブームみたいなものもあって、公式アカウントも個性を作っていこうっていう流れになったんですよ。その時、スロータウン映画祭のTwitterアカウントで出鱈目やってて個性出そうとしたりして。
だけど、だんだんポリコレのモードが入って、空気感がちょっと窮屈になって。それでオープンに話するより個人的に好きだったり面白いって思ったニュースを好きそうな人に送りつけることにしたんですよ。なんかその人の役に立てばいいなあって思って。
――ニュースを選んでいる理由を教えてください。
渡辺:みんな地元の情報って好きでしょ。井戸端会議っていうか。僕、政治ニュースっていうか、豊橋の著名人や有名人の話題とかも送るけど、そういうゴシップみたいなのも楽しいし。
僕、ひねくれてるんですよね。だからきれいなニュースだけだと不信感があるわけですよ、それだけじゃないだろう、って。
これ、自分でもうまく言語化できないんだけど、僕、豊橋のこと正直そんなにいい街だとも思ってない。
で、豊橋に住んでる人らが豊橋ディスってるのは、割と共感できるんだけど、豊橋から出てった人らがディスっているとカチンとくる。なんだろうこれ。愛憎というか、何だろう?何かいい単語とかあるんだろうか。
――出来の悪い子の愚痴を母親がいうけど、他人に指摘されるとムカつくみたいな?
渡辺:そういう感じがある、豊橋に。例えば豊橋○○って冠しているイベントでも、「あれは俺の豊橋じゃない」みたいなのもありますよ。でも自分でイベント仕切ってるでしょ、そうすると仕切れる人はすげーなって思うから、そういう人は大事にしたい気持ちもあって……なんかちょっと複雑なんですよ。そういうイベントを仕切れるプレイヤーは確実に減っているから。
僕たぶんね、左利きだったことを矯正されたことが根っこのところにあって。なんで自分が変えなきゃいけないんだって思ってた。だから、なんとなくそういう大義みたいな……例えば若い子がやるってだけで応援されたりとか、有名人が仲間にいるから予算が大きいとか、そういうのに対する反発心みたいなものがめちゃめちゃあるわけです。
そういうのもあって、ニュースを配信してるっていうけど、そのニュースの選び方とか、届け方は相手との距離を図ってやってるところはありますね。無差別に垂れ流しすんじゃなくて、自分の保身もしつつ、相手に面白がってもらえると思えることを届けてる。
――だから結果的にパーソナライズセレクションになる。
渡辺:なんかそういう気取ったカタカナはちょっと嫌ですけど(笑)まあ、ぼちぼち、楽しんでやります。
(聞き手:当法人 代表理事 村井真子)
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