面白いまちには面白い人が住んでいる。
豊橋市の面白い人、尖った人を紹介したい!この人突き抜けてると思える人と繋がりたい。
このコーナーはそんな思いから生まれました。
第6回は豊橋から世界を変える合同会社Drive BEAST 代表社員の岡田陽さんにお話を伺います。
■ 岡田陽さんプロフィール
大阪市出身豊橋市在住。武蔵精密工業(株)へ新卒入社。社内の自動車部品製造に関わる設備の機械設計に従事。社内新規事業創出プログラムに参加。起業するため転職しデジタルエンジニアへリスキリング。合同会社Drive BEASTを設立。 情報を可視化するためメタバースを活用し、直感的に欲しいデータにアプローチできる管理ツールを開発提供している。
■モノづくりの現場で何ができるか、どういう貢献ができるか
――メタバース空間を通じたDXを事業として展開されています。
岡田:そうですね。メタバースだけではありませんが、技術というのはあるプロジェクトを実行していくためのツールというか、場なんです。だからそれ自体はあくまでも“手段”であり、そこで何をしたいかが大事になってきます。もともと武蔵精密(*1)さんの出身なので、特にモノづくり、製造業の現場で何ができるか、自分がどういう貢献ができるかなといつも考えていますね。
ただ、最初からデジタルの世界を目指してたわけではないんです。一番最初のきっかけはミニカー。小さいころからミニカーがあれば延々と遊んでいられる子どもだったので、進路をどうしようかなと考えたときに自然と車関係に進みたいなと思ったんです。
――それで車を作る道へ。車を…車を作れるんですか?
岡田:作れるんですよ!(笑)進学したのは学校法人ホンダ学園(*2)というところでしたけど、当時は自動車研究開発科って言うのがあって。それで卒業した後、その技術が生かせるところ、面白そうな会社を色々探して、最終的に武蔵精密さんに入りました。
――ご出身は大都会ですが、豊橋に来て戸惑われませんでしたか?
岡田:戸惑いはしなかったですね。大阪でも比較的都会に住んでいたので、はっきり言って駅のホームに降りた瞬間から何もかも違います。だから新鮮という捉え方になりました。戸惑い、ギャップみたいなものもなかったですね。
武蔵精密さんは大きい会社なので、ホンマにいろんなところから新卒が入るんです。一番仲が良い同期は北海道出身でしたしね。
豊橋って交通の便がいいでしょう。大阪を起点に考えるとね、関東は遠いんです。だけど豊橋なら新幹線でもバイクでも帰れる。最近はもう、なんだったら豊橋に大阪作っちゃえばいいなと思って。そうすればあまり帰らなくても良くなる。
――豊橋に大阪を作る!
岡田:要するに飲食店とか、ここ大阪ですみたいなものがあればいいので。物理的な場所という意味で住んでいる地域にそんなに愛着を持たないんです。なんだったら大阪も21年住んで飽きてたくらいだから。あと、大阪は大阪で都会でしょう。いろいろな意味で人が多いし、密になりすぎるんですよね。プレイヤーもたくさんいるから、尖った人でも埋もれてしまう可能性がある。そういうところから考えると、豊橋のサイズ感はちょうどいいなと思いますね。
■縁があって、豊橋にいる。そのことは大事にしたい
岡田:縁があってここにいるから、その縁は大事にしたいんです。豊橋じゃなきゃダメってこともないんだけど、ただただ縁があったから。もうそれはロジックとか関係ないですね。出ていく機会がないわけではないけど、今は豊橋との縁というのが上回っているから出ないですね。
――豊橋は武蔵精密工業さんに大感謝ですね。
岡田:武蔵精密さんってホンマにいい会社なんです。自動車産業自体がイノベーションが必要だ、新規事業をやろうというムーブメントがあって、武蔵精密さんも2017年から社内で新規事業開発を本気でやるようになりました。プログラムに応募して、その時は不採用でしたが、それから独自で動いて一部採択してもらえたり、かなり好き勝手させてもらえた。会社のお金で試行錯誤させてもらった感じです。だから、今は退職してるけど、武蔵精密さんの新規事業に関するイベントに参加して色々アドバイスしに行ったりもしてますね。
――岡田さんからあふれる武蔵精密愛を感じます。起業されたのはかなりのご決断だったんですか?
岡田:決断と言うか、自分はホンマに武蔵精密さんで好きにやらせてもらえたんですよ。だから、新規事業をやるにしても、ギリギリまで会社の利益になるように、売上出せるようにって粘りました。ここじゃないとこんなにやれないと思ったし。だけど、だんだん、会社の方向性や社内新規事業の制約と、自分のやりたいことがずれてきて。思い切って自由にやったほうがもっと面白いこと、いろんなこと出来るなと思って、最終的に2021年の年末で退職しました。
退職したときはもう起業する気だったから、デジタルの分野でもっと力付けたいと思って修行に行きました。それで1年半くらいかな、別の会社で働いて、スキルを磨いて独立しました。
――お話では岡田さんは最初から起業家を目指しておられたのではなさそうですが……?
岡田:はい。そうです。でも、すごくプロ意識が高かったんですよ。プロスポーツって、そのシーズンで成績が出なければ年棒下がって契約解除、みたいなことが普通にありますよね。その意識が社会人になって給料もらうようになってすぐ生まれました。会社員ってそうそう馘にならないですけど、1年間やることやれなかったら、来年は馘になるかもなって思って自分を追い込んでいた。成果を出せるようにしなければならないって、社会人一年目でもう意識はプロですよ。でもお給料もらってるから、そうじゃないとアカンと思った。
▲2024年12月に開催された100人カイギTOYOHASHIにて
■半年前の自分より、半年分イケている自分になるという自負
岡田:新人だからすべての仕事があたらしくて、やったことないことをどんどんやる。それで結果を出す。それが一つのモチベーションなんです。毎年自己ベスト更新する。だから、半年前の自分はしょぼいなって思うんです。振り返ったとき、客観的に、イケていない。今のほうがいい。そうじゃないとアカン、半年前と一緒だったらアカン、と思うんです。
――ストイック…!!でも、周りにも同じようにそれを求めてしまわないものですか?
岡田:昔はちょっとありました(笑)。でも、それは違うんですよ。人の価値観、バックグラウンドはみんな違うので。だから、一緒に仕事してもらう人には、その人がハイパフォーマンスでできる状態を作る、ということが自分の仕事だと思ってますね。パフォーマンスの出し方って全員違うから。
――岡田さんのその熱量はすばらしいです。そういうマインドは育成できるものなのでしょうか。
岡田:自分ははっきり熱量と行動量が多い、多分異常に多いタイプです。でも、これは育てられたものだと思うんです。それこそ武蔵精密さんが育ててくれた。最初に事業起こそうとしたときにホンマにボロカス言われまして。それで、くそ、クリアしたる、みたいな根性論……合理的な根性論でクリアする、ということができるようになった。これ、なんとなくの根性論で言ったらダメで。それだと疲弊してしまうので、合理的な根性論が展開できるような素地を外部の人間が作ることはできると思いますね。
どんなことでも、結局は本人がやるかやらないか、ということに依存するでしょうけど、本人の中に眠っているものを芽吹かせる、想起させる、ってことは外からでも出来る。

――芽吹かせるとすると、育成する側も育て方を間違えないようにしないといけない。
岡田:そのとおりです。合理的だけど根性も出させないといけないから、自分が言ったことが相手が響いてくれるような関係性、エンゲージメントはないとだめですね。こいつ無茶苦茶言ってくる、でも応えよう、とさせるエンゲージメントです。遠慮させない、そういう気構えが支援する側にも必要だと思いますね。
――出る杭を打ちながら伸ばすようなイメージでしょうか。
岡田:自分もかなり出てたと思いますが、まあ、出てくる人に対しての周囲の反応って別れますよね。凄いな、面白いやつだなと言ってくれる方と、距離置いてくる人と。だから、それは自分も付き合い方を選べばいいんだと思うんです。一方的に選ばれるんじゃなくて、はっきり言って自分も人間関係を選ぶ。伸びられる方に行く。
だから自己分析が大事ですよね。自分のモチベーションを保つにはどういう方向性がいいのか、どういうときに頑張れるのかを定期的に振り返る。そのうえで自己責任で選ぶ。
――岡田さんのお勧めの自己分析法、マインドの整え方を教えてほしいです。
岡田:本を読む。自分の場合はスポーツ選手とか、起業家の伝記みたいなものが好きです。読んで、イチローさんのこの考え方を真似しよう、氷室京介さんのこのマインドを組み合わせてみよう、みたいな。取り入れるのは、自分に合うところの一部分だけで良いんです。いっぱいヒット打つ訳じゃないので。意識的にそういう時間を作ることを習慣化してます。行動を伴いながら続けていくと、自分が言うことに説得力も出てくる。半年前の自分より、今の自分の方が発言に重みがある。
どの環境に居てもそれなりに払う対価、維持するカロリーがかかるからこそ、自分がどんなふうにしたいか、どうするか、って自分で考えることが本当に大事だと思います。
(聞き手:当法人 代表理事 村井真子)
注1)武蔵精密工業株式会社のこと。愛知県豊橋市に本社を置く自動車部品メーカーで、1956年設立。エンジンやトランスミッション、電動車両向けの精密部品を主力製品としており、特に駆動系部品で世界トップクラスのシェアを誇る。新規事業の開発も熱心でこのインタビューも武蔵精密工業株式会社の運営するコワーキングスペース「CLUE」で行われた。
注2)学校法人ホンダ学園ホンダ テクニカル カレッジ関西のこと。自動車メーカーHondaが母体の自動車大学校で、一級自動車研究開発学科、自動車整備科、自動車整備留学生科の3つの科からなる。
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