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豊橋校区紹介vol.2 【多米校区】みんな帰ってきたくなる。「実家」になれるポテンシャルのあるまち

豊橋市の東部に位置する多米校区。西側を除く三方を山に囲まれ、東へ進めば多米トンネルを通って静岡県湖西市へと抜ける、豊かな自然に抱かれた地域です。

校区の中央には朝倉川が流れ、その周辺に住宅地や学校、公園などがまとまっています。少し歩けば山や川、生き物に出会える一方、豊橋鉄道東田本線が校区入口の赤岩口まで伸びており、市内中心部への移動もしやすいエリア。自然とまちの便利さが、ほどよい距離に共存しています。

今回は、多米校区の魅力を次の世代へつないでいこうと活動する、多米校区地域活性クラブ「コの字」の皆さんにお話を伺いました。

▲多米小学校を起点にした多米校区。三方を山に囲まれた地形が「コの字」の名前とロゴの由来になっている(画像出典:Googlemap)

魅力① 毎日感動するほど緑が美しい環境

多米校区の魅力を尋ねると、皆さんがまず挙げたのは、やはり身近な自然でした。

「校区の外から来た人には『山が近いね』とよく言われます。多米出身、多米育ちの自分たちには当たり前すぎて魅力として意識しにくいのですが、離れてみるとこの地域の一番の魅力は山の近さ、緑の美しさだと思いますね」

多米小学校の運動場に立つと、三方を山に囲まれた景色が目に入ります。校区外から少年野球の試合に訪れた子どもたちが、その雰囲気の違いに驚くこともあるそうです。

お話を伺った「コの字」メンバーの鈴木さんも、一度多米を離れ、名古屋で暮らした経験がありました。

「多米にいた頃は、山が近いのも空気がおいしいのも当たり前でした。でも名古屋で暮らしてみたら、『多米ってすごくいいところだったんだ』と気づいたんです。名古屋もいい所はたくさんありましたけど、子育てするなら山が近いところがいいと思って、妻と相談して戻ってきました」

また、多米校区で飲食店を営む大木さんは、配偶者のご実家が多米地区だったという縁で豊橋市内の他校区から転居してきました。居住してからは山の景色に惚れ込み、 「嫁ぎ先が多米でラッキー」 と感じているそうです。 

「特に新緑の季節が好きです。仕事へ行くときに、昨日より緑が少し増えていることに気づく。いつもの帰り道なのに、山がきれいで感動することがあるんですよ」

朝倉川では、地域の人たちが長年にわたり木を植え、川辺の環境を整えてきました。その積み重ねによって、今では再びホタルが見られるようになっています。小学生が川で魚を調べたり、山で昆虫に触れたりすることも、多米では特別なイベントではなく、日々の暮らしの延長にあります。

「土や水、虫や木に触れながら子どもを育てたい人には、ぴったりの場所だと思います」

身近に自然があること。そして、その自然を守り、次の世代へ渡そうとする人がいること。その両方が、多米校区の豊かさをつくっています。

▲地域の人たちの長年の活動により、ホタルが戻ってきた朝倉川

魅力② 人間関係の距離感がちょうどいい

多米校区では、進学や就職を機に一度地域を離れても、結婚や子育て、親の介護などをきっかけに戻ってくる人が少なくないといいます。「コの字」中心メンバーである友永さんは、多米の環境は子育てに最適だと語ります。

「若い頃は進学や就職でいったん外へ出ても、家を構えるときに多米に戻ってくる人が多いんです。自然のなかで子育てができるっていうのもあるでしょうが、市内の中心部と比べて住宅や土地にコストメリットが感じられやすい。自分の望む条件の家が建てやすいんだと思います」

一方で、「田舎ならでは」といった昔ながらの濃密なつきあいを強く求められる地域というわけでもありません。実は多米地区の住宅地の多くは、昭和50年頃の区画整理を機に発展したもの。友永さんたちも、当時家を建てた世代の子どもにあたる「二世代目」です。

「顔が見える安心感はあるけれど、べったりした関係ではない。地域とつながりたい人は入っていけるし、少し距離を置きたい人も無理なく暮らせるのは、多米のこういう歴史と関係があると思います」

多米校区では毎年花火大会も企画されています。コロナ禍でいったんは縮小したものの、夏休みの時期に継続して開催。打ち上げ花火やスターマインが見どころで、ひとつの自治会で開催されているとは思えないほど、盛大に開催されています。すっかり多米の夏の風物詩ですが、この行事をお盆休みに戻そうか、というアイディアもあるそうです。

「前は、お盆になるとみんな多米から出て実家に帰って行ってしまった。だから花火はお盆を避けて開催していますが、今僕らの子供世代はお盆になると多米に帰ってくるようになるでしょう。みんなお盆で花火があるから集まろう、っていうことになっていくとコミュニティが続きますよね。世代ごとに横のつながりがちゃんと持てるってすごくいいことだと思う」

鈴木さんはそんな風に未来を語ります。実家がある人にとっては「帰ってこられるまち」。そして多米に縁がなかった人にとっても、暮らすうちに顔見知りが増え、いつか自分や子どもにとっての「実家」のような場所になっていく。そんな、ほどよく温かな距離感があるところが多米校区の大きな魅力です。

▲多米では市民有志による市も不定期に開催。交流できる場が豊富なのも魅力(日程は2026年のもの)。

魅力③ 自然豊かでも、まちなかから遠すぎない

「自然はあるけれど、そこまで不便ではない。そのバランスが、多米のよさだと思います」と皆さんは話します。

校区内からは、豊橋鉄道市内線の赤岩口停留場を利用できます。高校生になると市電を使う人もいれば、市内の高校まで自転車で通う人も多いそうです。車があれば、市内中心部だけでなく、湖西方面へも移動しやすく、日常の通勤や買い物にも対応できます。

ただし、校区内には大型スーパーがなく、住む場所によっては車が欠かせません。特に、運転が難しくなった高齢者の買い物や移動をどう支えるかは、地域のこれからを考えるうえでの課題です。

それでも、人口規模が小さすぎず、小・中学校には複数の学級がある一方、山や川がすぐそばにあるという環境は、多米ならでは。多米小学校は全校児童600人あまり(2026年8月現在、多米小学校ホームページ掲載)。

「自然のなかで育ってほしい。でも、学校生活ではいろいろな友達と出会ってほしい。人数がいるからこそできる経験もあります。多米はそういう意味でもすごくバランスがいいと思いますね」

便利さだけを求めれば、もっと中心部に近い地域があります。自然の深さだけを求めれば、ほかにも選択肢はあるでしょう。けれど、働きながら子育てをし、その先の暮らしまで同じ地域で考えられる。その“ちょうどよさ”が、多米を選ぶ理由だと大木さんは教えてくれました。

▲多米小学校の校庭の遊具からも山々が眺望でき、四季の移ろいを身近に感じられる

魅力④ 「参加しなければ」ではなく、「楽しそうだから行ってみたい」場所が豊富

多米校区では、自治会活動をはじめ、前掲の花火大会、スポーツクラブ、自然歩道の保全、子どもたちによる清掃活動など、さまざまな地域活動が行われています。一方で、活動する団体同士が十分につながっておらず、住民であっても「どこで、誰が、何をしているのか」「自分も参加してよいのか」が分かりにくいという課題がありました。

そこで生まれたのが、多米校区地域活性クラブ「コの字」です。

活動の始まりは2024年。世代の異なる住民が豚汁を囲み、「こんな多米になったらいいね」「こんなことをしたら面白そう」と語り合う「豚汁会」を重ねてきました。そして2026年4月、話すだけで終わらせず、思いを形にしていくための団体として正式に発足しました。

名前の由来は、西側がまちなかに開き、三方を山に囲まれた多米校区の地形。コの字の形をしたロゴには、地域の人や活動がつながり、輪が少しずつ広がっていくようにとの思いも込められています。

活動には、中学生や20代の若者、子育て世代、地域活動に長く携わってきた人など、幅広い世代が参加しています。大きな地図を囲んで地域の店や団体、自然、歴史を書き込み、多米の情報を一か所で見られるポータルサイトづくりも進めています。

目指しているのは、既存の団体に取って代わることではありません。人と人、団体と団体をつなぐ「入口」になることです。

「『地域でつながりましょう』と言われると、少し構えてしまう人もいます。でも、楽しそうだから豚汁を食べに来たら、いつの間にか顔見知りができていた。そんな仕組みをつくりたいんです」

誰かに頼まれたから参加するのではなく、面白そうだから行ってみる。そこで知り合った人と、次は何をしようかと話してみる。「コの字」がつくろうとしているのは、今の時代に合った、無理のない地域との関わり方です。

▲「コの字」メンバーの三人。ひろびろした青空をバックに。

* * *

三方を山に囲まれ、川が流れ、学校や公園、住宅地がほどよくまとまる多米校区。自然のなかで暮らしながら、まちなかとのつながりも保てる地域です。

何より印象的だったのは、多米をいったん離れた人が、そのよさに改めて気づき、家族とともに戻ってきていることでした。生まれ育った人にとっては、帰ってきたい「実家」のようなまち。新しく住む人にとっては、これから家族の記憶を重ね、自分たちの「実家」にしていけるまちです。

そして今、「コの字」の皆さんが、地域にすでにある人や活動をつなぎながら、その魅力を次の世代へ渡そうとしています。

山の緑が美しい季節に、まずは多米のまちを歩いてみてください。いつもの暮らしのすぐそばにある自然と、地域の人たちが大切にしてきた風景に、きっと出会えるはずです。


お話を聞かせてくださった方々(順不同)
多米校区地域活性クラブ「コの字」
友永茂雄さん
鈴木順士さん
大木裕子さん

「コの字」の活動情報
Instagram:@konoji.tame.2026

文責
移住者人材バンク代表理事 村井真子

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